· 

塗り壁 材料その1 漆喰系

私は、「一部分でも室内に塗り壁はいかがですか?」とよくお勧めしています。その塗り壁にはいろいろな物があります。カタログ等を見ると良い事がたくさん書かれていてどれを選べばよいのか?、わかりませんよね。さ~どれを選ぶか?、そのためにはそれぞれの特徴を知る必要があります。

まずよく聞く塗り壁とは、漆喰と珪藻土ではないでしょうか?。では漆喰とは、珪藻土とは、その違いとそれぞれの特徴を説明します。

 

漆喰とは

神社仏閣、城郭や土蔵等に古くから使われている建築材料です。

主原料は石灰岩です。石灰岩(CaCO3)は海中の生物の遺骸が堆積した物で、珊瑚や貝等と元は同じものです。その石灰岩を高温で燃焼すると生石灰(きせっかい Cao 白い石のようなかたまり)になります。これに水を加えると(反応=消化する)、消石灰(Ca(OH)2 白い粉末、運動場のライン引き等で使っています)になります。この消石灰が主成分になり、海藻糊(ツノマタ、ギンナンソウ、フノリ等ですが、近年パルプを溶かしてつくる化学糊のメチルセルロース等も使われるようになりました)、スサ(わら、あさ、紙等の植物繊維)、そして水を加えて塗り壁材となります。これが漆喰です。

漆喰は石灰の硬化反応(空気中の二酸化炭素を吸収して)で固まり、鏝押えする事で硬くなります。そして硬化反応は、100年以上時間をかけ強度を増していくと言われています。

漆喰は独自で固まる性質があります。そのため海藻糊は、漆喰を固めるための物でなく、作業性を良くし、急激な乾燥を防ぎ、付着の効果を高めるためです。また、スサも亀裂防止のためだけでなく、水持ちが良いため海藻糊と同様に乾燥対策と作業性を良くするためです。

昔はこれらの物を左官職人が地域の気候や下地に合わせて現場で調整し練り上げていました。

近年ではこれらの物がすでに調合され、現場で水を加えて練るだけで使用できる物、さらに色々な物が調合され土壁等の下地でなく石膏ボードの上から塗れる物も出ています。

以前、現場でこの調合された漆喰を使いました。お施主さんとの共同作業だったのでさらにフノリをたして施工しました。ほんのりと海の香りがして粘り・付着性もちょうどよく非常に塗りやすい材料でした。

 漆喰の特徴は、まずは豊かな表現力を持っています。鏝押えや磨き、引きずり仕上等々いろいろな表現が可能で、着色もできます。そして、強アルカリ性(ph12~14)のためカビや細菌の繁殖を抑える抗菌性を持っています。ただし直接触れると肌荒れすることがあるので注意が必要です。また、湿度を一定に保つ調湿性もあります。これらの性質のため、昔は仏間の壁によく使われていました。

ただし、いい事ばかりではありません。硬くなる性質は、逆に収縮率が髙いためひびが入りやすいという欠点を持っています。キズはつきにくいですが、ひびが入る事が前程になります。それを理解していただける人でないとこの漆喰という塗り壁材は、なかなかおすすめはできません。

 

生石灰クリームとは

壁材のカタログ等を見ていると漆喰系?に生石灰クリームという物があります。この生石灰クリームとは、漆喰が日本の伝統的な材料なのに対して、世界中で使われてきた材料です。

主成分は漆喰と同じ生石灰ですが、漆喰は生石灰に水を加えてできた消石灰に糊とスサ等を加えた物ですが、生石灰クリームは生石灰に大量の水を加えクリーム状にして熟成させた物です。

漆喰と同様な性質を持っていますが、すでに練った状態なのですぐに使え、付着性もよく施工性の高い物です。ただし、水には弱く水廻りには向きません。

近年ではいろいろな物が調合され、さらに施工性や調湿性等、性能を上げた物も出ています。

私がよく使う「タナクリーム一日仕上げ」もこの部類に入ります。最初から練られた状態なので、水をたすこともなく、ただ練るだけ、それだけで非常に施工性のよい材料になります。塗り壁、鏝を使う事が初めての方でも楽しんで作業できます。ただし、左官の職人さんみたいに受台から鏝に載せ壁に付けていくのはちょっと無理ですが。

 

以上、漆喰系の特徴を説明しました。次回は珪藻土の特徴を説明します。